西さがみ・路傍の花 2017年09月01日号

西さがみ・路傍の花 [492] コフタバラン-らん科-

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草丈は一〇-一五cmの小形のらんである。
神奈川県では丹沢の蛭ヶ岳・桧洞丸の間で、箱根からは神山・大涌谷・姥子などから自生が報告されていた。しかしいづれも戦前の記録が多く、その上戦後観察例が絶えていたこともあって、『神奈川県レッドデータ生物調査報告書』一九九五年では、県下では絶滅種とされてきた。
写眞は一九八一年七月に筆者が神山で撮影したものである。林床にヒメイワカガミが群生している中に、本種が数株点在するのを見た。付近には当時ハコネランやアリドウシランなども観察できたが、やがて一面にコアジサイが繁茂して、これらの貴重種は衰退した。
なお別種のアオフタバランは本種よりやや大形で、温帯性の種類なので箱根や丹沢でも観察されている。またコフタバランは一九九五年に、勝山輝男氏が箱根大涌谷で再発見された(『神奈川県植物誌』二〇〇一年)。
(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

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