西さがみ・路傍の花 2018年01月19日号

西さがみ・路傍の花 [498] ヤブコウジ -やぶこうじ科-

2018/03/20

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茎は日蔭の地上を這うが、先端直立して髙さ一五㎝内外になる。草のように低いが、よく見ると常緑性の木だ。
暮から正月にかけて葉かげに赤色の丸い果実をつける。他に花もない季節のことだからその赤い実はよく目立ち、萬葉集の大伴家持の歌「この雪の 消遺る時に いざ帰らな やまたちばなの 実の光るも見む」という一首は、このヤブコウジと考えられている。
たとえば本種の方言を見ると、京都でカラタチバナというが加賀ではヤマタチバナと呼んでいる。橘は別に柑子とも云うので、九州でヤブカンジと呼び、江戸では昔からヤブコウジと云ってきた。字を宛てると薮柑子になるが、この薮の一字が障害になるらしく、茶席でも珍重されない。
やぶこうじ科にはイズセンリョウやマンリョウが属しているが、別にセンリョウはせんりょう科だから、近縁の種類ではない。
(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・路傍の花, 2018年01月19日号