西さがみ・季節の花ノート 2019年03月22日号

西さがみ・季節の花ノート [No.20] ユリワサビ -あぶらな科-

2020/06/16

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林の中を流れる渓流のほとりなどに生え、早春に四弁の白い花をつける。髙さ一〇-一五㎝ほどの小さな植物だが、春を告げる花だから忘れがたい。地中の根茎基部がヤマユリの球に似て、そしてワサビのように辛い。日本の野生のワサビは本種と二種類のみである。
西さがみの野の花ではあるが、不思議なことに酒匂川左岸の山地には普通であっても、右岸のたとえば箱根などではほとんど見ない。他にオドリコソウ・イカリソウ・カテンソウなどがやはり酒匂右岸には出てこない。
しかしこのユリワサビは明治維新前後に、横須賀造船所に居たフランス人ポール・サバチェが箱根で発見して記載された種類である。ずい分永い間なぜ箱根にないのか気にしていたのだが、二〇一七年四月二六日、私は箱根須雲川上流で数株を発見した。懐しかった。サバチェは誤ってはいなかったのである。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2019年03月22日号