西さがみ・季節の花ノート 2020年03月20日号

西さがみ・季節の花ノート [No.37] ハルトラノオ -たで科-

2020/06/16

Kisetsu_no_Hana_Note-037_harutoranoo
たで科の植物には草丈の髙い種類が多いが本種は髙さ一〇㎝どまりで可憐に見える。まだ朝ごとに寒気の残る季節に、白い中に淡紅色を混じえた花を開き、それがいっそう気なげな感じだ。県内では不思議なことに丹沢には見ないが、箱根とその山麓地域の林縁などに咲いている。写眞のような一株を発見すると、その付近に点々と他にも群落を作っていることが多い。
虎の尾とは花が穂状に咲く種類をこう呼び、文字通り「虎の尾」の姿を連想している。類縁には関係なく、オカトラノオ・ルリトラノオ・イブキトラノオなど、穂状に咲く各種にひろくこの形容が適用されていて、事実右の花はさくらそう科・ごまのはぐさ科・たで科などに亘っている。
しかしこれら多くの虎の尾と呼ばれる各種は、いづれも夏から秋に花期を迎える。ハルトラノオはこれらの中であえて、異色の存在なのである。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2020年03月20日号