西さがみ・路傍の花 2016年11月25日号

西さがみ・路傍の花 [473] ヌルデ -うるし科-

2016/11/28

路傍の花P-473_ヌルデ
写眞のように葉は九-一三枚の小葉になって対生するが、その葉の中軸に横に広がる翼が直列し、これがヌルデの特徴のひとつである。栽培種のウルシにはこの翼がない。
西さがみではヌルデをカツノキの方言で呼び、正月の初山(はつやま)の行事には欠かせない植物になっている。山仕事をする家では正月四日にその年の恵方(えほう)の方角の山に入り、適当な場所に注連(しめ)を張り、酒や餅を供えて山神を祀る。この行事が初山で、帰途カワノキを伐り家の神棚・仏壇・入口など各所にこの木の小さな束を供えるのである。
萬葉集の足柄歌に、「足柄の わをかけ山の かづの木の わをかづさねも かづ割(か)かずとも」(三四三二)とあって、カツノキとカヅノキと似ていてまぎらわしいが、萬葉歌のカヅは諏訪神社の神紋などに見るカジであることを、私は『あるく見る万葉集足柄箱根歌』(神奈川新聞社)で考記した。

(箱根カルチャー主宰 田代 道彌)

-西さがみ・路傍の花, 2016年11月25日号