西さがみ・季節の花ノート 2021年07月23日号

西さがみ・季節の花ノート [No.38] ヤマユリ -ゆり科-

2021/07/30

神奈川県では各地に自生するのでそれ程珍らしいとも思われていないが、全国的にみると分布は普遍的ではないので、他県から来た人にはひどく喜ばれることがある。
三河の鳳莱寺山に泊った時に宿の主人にホウライジユリというこの辺の特産の百合があると聞かされ、翌朝実物を見学するため裏山に登ったら、それはこのヤマユリであった。三河一帯は花の微紅色で美しいササユリの分布圏で、これは神奈川県には見ない種類だから、私にはこの方がよほど珍らしかった。
中国・四国・九州にも分布していない。昔大分の竹田藩主中川恒久が参勤交代の途中箱根山でヤマユリを見て感心し、その球根を採集して竹田城内に植えさせた。寛文六年(一六六六)の事という。
現在なら許可されないことだが、竹田城内に植えたので花の観賞のみでなく、篭城の時に根は兵糧に、さらに後には市の花になった。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2021年07月23日号