西さがみ・季節の花ノート 2021年09月17日号

西さがみ・季節の花ノート [No.39] ムラサキツメクサ(アカツメクサ) -まめ科-

2021/09/30

四ツ葉のクローバーを探す白い花をつける種類はシロツメクサである。こちらはそれよりも髙く茎が立ち、花は淡紅色である。
葉の白斑が人の爪の半月に似ていて、それで爪草だとの説明があるが誤っている。江戸時代長崎の出島に欧州から荷物が届くと、箱の中の緩衝材に牧場の干草が使われていた。オランダは牧畜の国だからこれは当然だが、それが長崎で発芽するとこれらの草が生じた。だから詰草である。
箱根では仙石原に多いが、これにも訳がある。明治十七年に鈍翁益田孝は広大なこの草原に着目し、青天を衝けの渋沢栄一と二人で牧畜業を開始した(『自叙益田孝翁伝』)。そしてその最盛期には牛二〇〇頭、馬一〇〇頭近くが飼われていて、牛乳は東京にまで販売されるに到った。今も仙石原に多いこれら牧草の子孫は、この時の飼料に起源している。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2021年09月17日号