小田原城さんぽ 2021年10月01日号

小田原城さんぽ [214] 小田原用水取入口

2021/10/01


=見学場所が欲しい最古の城下用水路=

日本最古の多目的用水と考えられるが、戦後城下全域の排水路工事で各地で分断され、史跡として見学できる場所もない。返すがえす残念なことで、どこか復原して往時の姿を再現したいものである。
天文一四年(一五四四)谷宗牧が小田原城下に宿泊して、庭の筧の水は箱根芦ノ湖の水と聞かされて驚いている記事があり、これがこの用水の初見である。実は芦ノ湖を水源とする早川を、上板橋で取水して城下を貫流させ、上水・防火用水・潅漑用水など多目的に使われていた。
水路は東海道を中心に開渠で流され、沿道の各戸は松丸太の芯を繰り抜いた木管で引水した。これを土中に埋設し、桶一杯汲む毎にその量だけ本流から補充される仕掛けであった。小田原の市郷土文化館にその木管の出土品が展示されている。写眞は現在の上板橋の取水口で、今は城の濠水の取入口と勘違いしている人も少くない。

(小田原の城と緑を考える会長 田代道彌)

-小田原城さんぽ, 2021年10月01日号