西さがみ・季節の花ノート 2022年01月01日号

西さがみ・季節の花ノート [No.44] スイセン -ひがんばな科-


時に日本水仙などと呼ばれることがあり、それで日本の野生種と誤解されているが、スイセンは古い時代からの帰化植物で、いわゆる野生種ではない。ただ早くから逸出したものが野生化し、越前岬、伊豆爪木崎、紀伊半島などでは名所となり、花期には多くの人々が訪れている。
これら日本の野生化したものは一茎に数箇の花をつけるいわゆる房咲きだが、これに対称的なのはラッパズイセンに代表される一茎一花のグループである。
そして栽培されるスイセンの本来の自生地は地中海沿岸一帯からスペインのピレネー地方で、欧州でも一六世紀までは房咲き種が流行していた。その後ピレネーでラッパ水仙が発見されると、一斉にラッパ型の流行が始ったのである。ところで日本の水仙の故郷はと云うと、恐らく中国であろう。それで学名もナルキッスス・タゼッタ・チャイネンシスだ。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2022年01月01日号