西さがみ・季節の花ノート 2022年03月04日号

西さがみ・季節の花ノート [No.46] モクレイシ -にしきぎ科-


旧版の『牧野植物図鑑』によると、「和名は木茘枝(もくれいし)ナランモ何故ニ斯(カ)ク名ヅケシ乎(カ)、予(ヨ)ニハ不明ナリ」としてさじを投げている。
茘枝はうり科の苦瓜のことで、モクレイシとは全く似た部分がないからである。
モクレイシは常緑の小髙木で、西さがみでは近戸神社の林の中に見かけるほか、さらに北に続く大磯の髙麗山にも分布する。この一群はその北限が秦野市の千村付近になる。
それより西には分布せず、伊豆には出てくるがその先は消え、再び出現するのは九州に入ってからで、それも九州南部と五島列島に出てくる。
似たような分布形態は以前韮山紙の原料とされていたサクラガンピもそれで、箱根・伊豆に自生する他は九州南半に出てきて、やや大形化しているのでシマサクラガンピと云う。古く連続分布していたものが、ともに中間で絶滅した例であろう。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2022年03月04日号