西さがみ・季節の花ノート 2022年05月13日号

西さがみ・季節の花ノート [No.48] キツネアザミ -きく科-

田植の準備が始まる頃、水田の畦畔や周辺の路傍に咲く。しかし本種もレンゲソウなどと同じく、最近では個体数を激減させ、だから偶に出会うと、何やら懐かしい気がする。
草丈は五〇-八〇㎝でその頂部が分岐してあざみ類に似た頭花を集合させている。しかし葉はあざみのように硬くなくやわらかくさらに草色で、そして刺もない。葉の裏側は白毛が密生して優しい。
キツネの名の由来は不明だが、あざみ類の多くは宿根性で何年も同一箇所にいるのに、こちらは二年草だから毎年意外な場所に咲いている。それでキツネのようなのであろうか。
本種は史前帰化植物と呼ばれ、農耕文化とともに大陸から日本へやってきた一群の植物のひとつである。マンジュシャゲなどは縄文時代に食用として日本へ入ったが、こちらは稻などの種子に混じて偶然に渡来して帰化した一種と考えられる。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2022年05月13日号