小田原市民会館の「壁画」が保存へ
2022/06/24
昨年7月に閉館した小田原市民会館。その大ホール内にあった「壁画」の一部が保存されることになり、6月16日から作業が始まった。市民会館の貴重な記録が形として残される。
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同館大ホールは1962年開館。壁画は1階の客席扉が並ぶ壁の赤(高さ約3・3m×幅約22m)と、2階の青(高さ2・3メートル×幅約11m)の2つ。建築構想時から計画され、完成当初は外から全面ガラス窓越しに鮮やかな赤と青の対比が眺められたという。
だが次第にこれが壁画だという意識は薄れ、多くの謎に包まれていたが、近年の調査で画家の故・西村保史郎さんの作品と判明。市は絵画の保存・修復が専門の東海大学教養学部芸術学科の田口かおり准教授に相談。提言を受け、部分的にでも保存することを決めた。
田口さんによると、これだけ大きく、また建物と一体となって制作された壁画は国内でも希少という。保存には、壁画の謎を調査してきた市民有志による「市民会館思い出アーカイブ隊」も協力する。
壁画は壁にキャンバスとなる布が貼られ、その上から絵の具や石膏を使って描かれている。作業は作品が割れないよう専門家が慎重に進め、特徴的な部分2ヵ所と作家のサイン部分をはぎ取る計画だ。
その後は分析と修復を進め、12月と3月に三の丸ホールで調査の成果とともに展示予定。
▲1階の壁画から慎重に一部を引き剥がす作業
▲2階の壁画の前で、その貴重性を解説する田口准教授