2017年01月01日号 西さがみ・路傍の花

西さがみ・路傍の花 [475] ビナンカズラ -もくれん科-

2017/01/01

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常緑のつる植物でつまり木であるが、林のへりなどに多く、あまり髙く伸び上ることがない。常緑の葉のかげに晩秋に写眞のように赤色の実をつけるが、葉に隠れてしまってだから目立たない。
その実は球形に集合しているので、どこか和菓子の『鹿の子』に似ている。光沢がありそれが弱い秋の陽にも輝いてみえるので、古名はサナカズラであった。サは接頭語でナは滑らかの意味、カズラは蔓である。滑らかとは果汁が粘ることを言うらしく、昔はこの汁液を髪を束ねるのに用いた。北条氏時代小田原の若侍たちの身だしなみの美しかったことを回想して、『北条五代記』は言う。
「髪をばびなんせきにて、びんを髙くつけあげ給へり。若殿原達は髪さきをもみ、ふさのごとくにゆい云々。」
このびなんせきが実はビナンカズラの果汁を原料としたものである。
(箱根カルチャー主宰 田代 道彌)

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