西さがみ・季節の花ノート 2021年11月19日号

西さがみ・季節の花ノート [No.42] キントキヒゴタイ -きく科-

箱根と丹沢と富士山麓に分布する。箱根金時山の稜線を歩くと、北側斜面にはタンザワヒゴタイがあり、稜線とその南側つまり仙石原にはキントキヒゴタイが分布している。
このようにヒゴタイと呼ばれる一群は古種が多く、そのため分布も局地的で、分類の歴史は複雑である。キントキヒゴタイも、それ以前には東京大学の中井猛之進が髙尾山などにあるタカオヒゴタイに近縁と認め、センゴクヒゴタイと命名した。
その後京都大学の北村四郎は宮の下の植物研究家沢田武太郎の案内で金時山に登り、センゴクヒゴタイとされていたものは純然たる独立種と結論して、キントキヒゴタイの新名を与えたのである。
ところで学界で解らないのはヒゴタイであった。早雲寺先代の千代田純英老師にそれを話したところ、僧衣の袖を飾る糸を集めた球形の総が、ひごたいと教えられた。こうなると植物学ではなく、すでに「箱根学」の話である。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2021年11月19日号