西さがみ・季節の花ノート 2022年12月02日号

西さがみ・季節の花ノート [No.55] ツワブキ -きく科-

海岸の岩場からその上部のクロマツやクスノキの林の中まで、広く分布する大形の種類である。中国南部から台湾に及んでいるが、分布の北限は本州で、太平洋岸では福島県、日本海側では石川県以南に見られる。
春から初夏にかけて海岸の林の中を歩くと、多数のツワブキの葉が捨てられているのをよく見かける。フキと同じように、葉柄を食用とするために持ち去ったのである。九州の海岸には特に大型の品種オオツワブキがあり、これは粕漬などにしてやはり食用する。
ツワブキは海岸からあまり離れないものだが、箱根峠から平安鎌倉時代古道を三島まで降った時、思いがけぬ山中でツワブキに出会ってびっくりした。地図で確認したところその地は海抜四五二米地点で、地名は「五輪」という。駿河湾からの冬の風が、こうして種子を運び上げているのであろうか。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2022年12月02日号