西さがみ・季節の花ノート 2019年02月15日号

西さがみ・季節の花ノート [No.18] オトメアオイ -うまのすずくさ科-

2020/06/16

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この仲間は常緑の種類も多く、冬も葉が残るので別に「寒葵(かんあおい)」と呼ばれてきた。別属ではあるがよく似たフタバアオイは、京都の葵祭りに用いられて有名であり、また徳川家の紋章の三ッ葉葵も、このフタバアオイを三ッ葉にデザインしたものという。
さてオトメアオイはその分布が箱根を中心として伊豆や富士・愛鷹の山地に限られ、つまり狭い地域に孤立遺在する珍らしい種類になっている。
つぎに一般の寒葵は毎年新葉が展開するのに、こちらは新葉が隔年にとどまる点でも異例としか云いようがない。写眞中央に花が見えるが、一般にこの花は春に開花してすぐに凋落し、続いて新葉が出る。ところがこちらの花はずっと残るので新葉の展開は次年に送られる。葉と花が隔年というこの性質は、本種が古い種類であることを、自ら物語っていそうである。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2019年02月15日号