西さがみ・季節の花ノート 2023年03月17日号

西さがみ・季節の花ノート [No.58] カントウタンポポ -きく科-

2023/03/31

タンポポ遊び

能の舞台では大小二種類の鼓が打たれるが、音色にも相違があってタン・ポポンと聞かれる。春の花のタンポポの和名はこの鼓の音に起源すると、これは民俗学者柳田国男の説であった。
タンポポの花柄はストローのように中空で、それを短かく切って両端を指で潰し、急に水に入れると写眞のように両端が反転して鼓にそっくりだ。子供たちは生き物のように急速に反転するその動きに感動して、声に出した。タン・ポポンと――。
在来種のカントウタンポポは春しか咲かないが、帰化植物の西洋タンポポは秋まで咲いている。在来種は適湿の土地を選び、だから個体数も稀になりがちだが、帰化種は乾燥した荒地でもかまわず進出して優勢である。
子供たちの世界にもゲーム機などまだ無くて、タンポポは春の花であった時代の、「野の遊び」の話である。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2023年03月17日号