西さがみ・季節の花ノート 2019年02月22日号

西さがみ・季節の花ノート [No.19] カンヒザクラ -ばら科-

2020/06/16

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ことさら緋色のめだつ花が他の桜に先がけて開花する。そこで和名は寒緋桜である。時にヒカンザクラとも呼ばれるが、これは彼岸桜とまぎらわしいのでここでは用いない。
ヒマラヤの山麓などに自生するが、その変種が中国や台湾に分布し、それが日本にも輸入されて園芸品として普及している。花は必らず下を向いてうな垂れ、そして平開せずにつぼみ状に半開するばかりである。変種名のカンパニュラータは釣り鐘状のというラテン語だが、乙女のうな垂れた姿が連想できないのは、けだしどぎつ過ぎる花色からであろう。
とにかく花期が早いので公園などにいち早く導入された。その後はヒガンザクラ・オオシマザクラ・マメザクラなどと交配させ、多数の早咲きの桜の品種が作出された。それで桜見物も寒い季節から誘い出されて、古来の著名な桜が咲く頃には、客はくたびれて出て行かない。元凶はこの桜だ。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2019年02月22日号