西さがみ・季節の花ノート 2019年09月27日号

西さがみ・季節の花ノート [No.28] ヤブカンゾウ -わすれぐさ科-

2020/06/16

季節の花ノートP-028_ヤブカンゾウ
カンゾウと云っても甘草(かんぞう)はまめ科の薬草をさし、萱草(かんぞう)がここで紹介するわすれぐさ科の植物である。そしてこちらの萱草とは、根茎基部が旧年の葉の残存した繊維に厚く包まれ、その姿から蓑や管を連想して云うのであろう。もちろん中国から来た名である。
日本の自生種にはノカンゾウやハマカンゾウがあり、ニッコウキスゲもこの仲間である。しかしヤブカンゾウのみは中国から人が伝えたものらしく、その証據に日本では人家の周辺にのみ見られるが深山には達していない。これは明らかに一時は人が持ち回って、後に飽きて捨てたものに相違ない。花が八重咲きというのが本種の特徴だ。
八重咲きのため結実しない。三倍体のため結実しないのはマンジュシャゲだが、双方とも人が大陸から持ち込んだ点まで共通する。中国ではヤブカンゾウの花を金刺菜(きんしさい)と呼んで食用にするが、日本へは何の必要から入ってきたのであろうか。

(箱根カルチャー主宰 田代道彌)

-西さがみ・季節の花ノート, 2019年09月27日号