小田原城さんぽ 2019年09月20日号

小田原城さんぽ [199] 藤原平の水井戸

2020/07/08

odawarajyo-sampo199_fujiwaradaira-hakkutsu
=北条時代からの髙地の城内井戸=

県立小田原髙校の正面玄関に接する南側の芝生の中に、この井戸の位置を表面標示して円形の石積みがある。平成一五年(二〇〇三)九月に校舎建設に先立つ遺構調査の際に発掘されたもので、円形の直径三米程の井戸であった。
江戸時代に、この場所は藤原平と呼ばれたが維新後は忘却され、私は『相中雑志』その他の伝承からこの地名を復活させていた。そしてこの井戸跡の発見により、「藤原平」の地名の意味も明らかになった。江戸時代稻葉正則がこの地に刀工藤原清平(きよひら)を招いた時、北条滅亡以来忘れられていたこの井戸は、再び陽の目を見たのである。
当時井戸底から、漆で人名を書いた磁片が発見された。「入谷(いりや)ッカド」・「八幡山山田」などと読まれ、この丘の直下の御山守の山田家は、遙々とこの井戸まで水汲みに来ていたことが知られた。水利の不便さを私は再び思い知らされた気がした。
【写真】藤原平 発掘磁片
odawarajyo-sampo199_fujiwaradaira-hakkutsu_map
(小田原の城と緑を考える会長 田代道彌)

-小田原城さんぽ, 2019年09月20日号