小田原城さんぽ 2020年05月29日号

小田原城さんぽ [205] 本丸稻荷型石樋

2020/07/08

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=本丸鉢巻石垣遺構=

関東大震災によって小田原城の石垣はほぼ全域にわたって崩壊した。そのため現在私たちが見ている小田原城の石垣はすべて昭和初期に積み直したもので、残念なことだが石垣の髙さや石の積み方にいたるまで、忠実に江戸時代の姿に復原した部分はない。
ところが一箇所だけ、江戸時代石垣の残存している場所がある。城内の星崎記念館の前庭の石垣がそれで、この部分の石垣は当初からこの位置で積まれたものではなく、上部の本丸の縁辺を構成していた「鉢巻石垣」が、震災でも崩れず、ただ石垣のまま滑り落ちてきて、ここつまり「腰巻石垣」の位置でもと通りの石垣になり済ましている訳である。
途中に稻荷型石樋が目立っている。本丸平面の雨水は直接本丸の縁から流下させると崩壊の原因になるので、本丸で一箇所に集水してそれを井戸のように垂直に落とし、途中から横穴を掘って排水する。その出口が稻荷の石祠のようなのでこう呼ぶ。
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(小田原の城と緑を考える会長 田代道彌)

-小田原城さんぽ, 2020年05月29日号