小田原城さんぽ 2019年01月25日号

小田原城さんぽ [194] 早川観音堂

2020/07/03

odawarajyo-sampo194_hayakawa-kannondou
=五色の糸にとりすがって=

観世音菩薩の信仰は西さがみでは藤原時代に隆盛をきわめた。飯泉観音・ここ早川観音・怒田の朝日観音などいづれも藤原時代の一木造りの古い観音像でありながら、その信仰は今も衰えることなく続いている。
縁日は毎月一七・一八日だが、特に正月五月九月に参詣が多い。堂の本尊は聖観音の立像で像髙九四cmの美しいお姿だが、秘仏だから五〇年に一度しか開帳されない。
最近のご開帳は昭和五九年であった。その時拝見した限りでは頭頂部など長い星霜の間空気に溶けたかのように丸くなって、それが崇髙さを増していた。
掌をあげてその指先に五色の糸が巻かれ、その糸の先が参拝者の前に伸びていて、老婆たちがこもごもにその糸にすがり、有難さに涙していた。平安の昔貴族たちの往生の姿が連想されたが、その風景が今も早川観音に残っていると思うと、私も立去り難かったことをおぼえている。
odawarajyo-sampo194_hayakawa-kannondou_map
(小田原の城と緑を考える会長 田代道彌)

-小田原城さんぽ, 2019年01月25日号